【ガヨマウンテンとは？】特徴・味わい・産地を徹底解説

ガヨマウンテンコーヒーは、「インドネシアのスマトラ島タケンゴン地区にて生産されたアラビカコーヒー」です。

インドネシア・スマトラ島のタケンゴン地区とは？

南北に細長いスマトラ島の最北端に位置するアチェ州は、東西と北端が海に面していますが中央に山脈があります。この山脈の中央に中アチェ県という県があり、その県庁所在地がタケンゴン市です。タケンゴン市はアチェ州の州都バンダアチェ市からも隣の北スマトラ州の大都市メダン市からも車で12時間を要しアクセスは大変ですが、ラウト・タワル湖という大きな湖の湖畔にあり朝夕は霧に包まれる桃源郷のような美しい高原都市です。

アラビカコーヒーとは？

コーヒーには、アラビカ種とロブスタ種という品種があります。高い標高でしか栽培できないアラビカ種は繊細な風味と豊かな香りが特徴で高品質ですが、病気に弱く栽培が難しいという欠点があります。日本では、ストレートコーヒーやスペシャルティコーヒーとしてアラビカコーヒーが飲まれています。低地でも栽培でき病気に強いロブスタ種は、カフェイン含有量が多く強い苦味が特徴です。ロブスタ種は、アラビカ種に比べ低価格です。日本では、ブレンドコーヒー、インスタントコーヒー、缶コーヒーでロブスタコーヒーが使われています。

タケンゴン地区は世界でも稀なアラビカコーヒーの生産適地

アラビカコーヒーの生産適地は、標高1,000-2,000mの高地、15-24℃の年間平均気温で雨季・乾季のある気候、火山性で水はけの良い肥沃な土壌、年間1,200-2,200mmの降水量とされています。タケンゴン市内の標高は1,250mで、コーヒー畑はさらに高い標高1,300-1,500mの山の斜面にあります。タケンゴン市の年間平均気温は19.2℃で、10-5月の雨季と6-9月の乾季に分かれています。土壌は火山灰土で、年間降水量は2,184mmです。このように、タケンゴン地区は標高、気温、土壌、降水量の全てがアラビカコーヒー栽培に適した条件になっています。これだけの生産適地は、世界を見渡してもなかなかありません。タケンゴン地区は、世界でも稀なアラビアコーヒーの生産適地なのです。

日本で有名なインドネシアコーヒーはマンデリン

ガヨマウンテンコーヒーが生産されるタケンゴン地区の周辺では、高級コーヒーとして日本でも有名なマンデリンコーヒーが生産されています。マンデリンコーヒーは、「北スマトラ州とガヨマウンテン生産地区を除くアチェ州で生産されるコーヒー」のことです。北スマトラ州は、タケンゴン地区があるアチェ州の南隣の州です。アチェ州の中でもガヨ高原があるタケンゴン地区以外で生産されたコーヒーは、ガヨマウンテンではなくマンデリンに分類されます。ガヨマウンテンコーヒーはタケンゴン地区のみで生産された特別なコーヒーという感じがしないでしょうか？しかし、日本ではマンデリンだけが有名でガヨマウンテンはあまり知られていません。なぜでしょうか？マンデリンとガヨマウンテンを比較してみます。

生産量

マンデリンとガヨマウンテンの銘柄別生産量データがみあたらないので、州別のコーヒー生産量を比べてみます。マンデリンが生産されている北スマトラ州の2023年コーヒー生産量が年間9.0万トンであるのに対し、ガヨマウンテンが生産されているアチェ州のコーヒー生産量は年間約7.1万トンです。先に述べたとおりアチェ州産のコーヒーのうちタケンゴン地区で生産されたものだけがガヨマウンテンに分類されその他はマンデリンになりますので、ガヨマウンテンの生産量はもう少し少なくマンデリンは多くなります。いずれにしても、マンデリンとガヨマウンテンの生産量に大きな差はありません。

品質

ガヨマウンテンに分類されるコーヒーは、スマトラ島中央部で標高が高いタケンゴン地区（ガヨ高原と言われています）でとれたコーヒーのみです。同じアチェ州産のコーヒーでも、ガヨ高原以外の低地などで生産されるものはマンデリンに分類されます。高品質アラビカコーヒーは高地で生産されることを考慮すると、ガヨマウンテンコーヒーはマンデリンに勝るとも劣らない品質だと言えます。

インドネシアでの知名度

インドネシアでは甘い紅茶を飲む習慣がありましたが、スターバックス等の影響もあり近年はジャカルタ等の大都市でハンドドリップのコーヒーを出すカフェが増えてきました。そのようなカフェでは、マンデリンとガヨマウンテンが人気の高級コーヒー銘柄になっています。インドネシアでは、ガヨマウンテンは良く知られたコーヒーです。

日本での知名度

日本では、マンデリンの知名度が高いのに対しガヨマウンテンはあまり知られていません。ガヨマウンテンを取り扱っているカフェもほとんどありません。理由はわかりませんが、アチェ州では過去に独立紛争がありコーヒー豆の輸出が難しい時期が長く続いたことが大きな原因なのではないかと思います。

独立紛争とスマトラ沖地震／インド洋大津波という悲劇を乗り越えた小規模農家が生産しているコーヒー

ガヨマウンテンコーヒーは、1953年から2005年まで長く続いた独立紛争と2004年12月26日のスマトラ沖地震／インド洋大津波という悲しい出来事を経てやっと平和になったアチェ州で生産されるコーヒーです。高原であるタケンゴン地区は大津波の被害を免れましたが、海岸部に住んでいた家族が犠牲になったという人もたくさんいます。津波の被害から無傷だったわけではありません。独立紛争と大津波という苦難の歴史を乗り越えてきたアチェの小規模農家が生産するガヨマウンテンコーヒーは、味が美味しいだけでなくフェアトレードの対象として応援したくなるコーヒーです。

ガヨマウンテンコーヒーを飲んで最初に感じるのが、エキゾチックでフルーティなフレーバーです。マンデリンで強いフレーバーを感じることはあまりありませんが、ガヨマウンテン（特に中浅煎り）では舌の両側で爽やかなフレーバーを感じます。甘みすら感じます。

フルーティなフレーバーに続いて、舌の奥側でコーヒー特有の苦みと濃厚なコクを感じます。精製や焙煎の方法によりますが、苦みの程度はマイルドであることが多いです。ミルク無しのブラックでお楽しみいただけます。

最後に、クリーンな後味を感じます。ガヨマウンテンはミルクを入れずにお楽しみいただける苦さなので、ミルクのベタっとした感触が口の中に残りません。ガヨマウンテンで至福の数十秒間をお楽しみください。

インドネシア産コーヒーの一般的特徴

インドネシアでは低地でも栽培可能でインスタントコーヒーなどでよく使われるロブスタ種のコーヒー生産が大半ですが、高品質のインドネシア産アラビカコーヒーとして日本で良く知られているのがマンデリンコーヒーとトラジャコーヒーです。これらインドネシアのアラビカコーヒーは、苦味やコクが強いことが特徴とされています。

マンデリンコーヒーの特徴

マンデリンコーヒーの特徴は、苦味やコクが強く酸味がほとんど感じられないことです。苦みを強調した深煎り焙煎で飲まれることが多くまさに苦みとコクのインドネシアコーヒーというイメージで、ミルクにも良く合います。個人的には、苦いコーヒーにミルクを入れてちびちび味わうという昔ながらの喫茶店で飲むいわゆるコーヒーというイメージです。強い苦みが得意でない方には、ちょっと苦すぎるかもしれません。

トラジャコーヒーの特徴

ガヨマウンテンやマンデリンが生産されるスマトラ島から遠く離れたスラウェシ島で生産されるトラジャコーヒーは、マンデリンのような苦味やコクの中にもほのかな甘みを感じる事ができることが特徴だと言われています。

ガヨマウンテンの特徴

ガヨマウンテンコーヒーには、マンデリンやトラジャにはないフローラルで爽やかな酸味があります。深煎りで苦みとコクを楽しむというよりも、世界的に有名なエチオピアのイルガチェフェのように中浅煎りで華やかな香りと酸味が楽しむことができるのです。最近は、スペシャルティコーヒーやサードウェーブコーヒーという形でコーヒー産地ごとに異なる香りやフレーバーを楽しむことが流行になっています。ガヨマウンテンは、インドネシアコーヒーの中で最もスペシャルティコーヒーに向いているコーヒーです。

アチェ州は、インドネシア西部にあるスマトラ島の北端に位置する州です（本サイト最上部の地図をご覧ください）。州の南は北スマトラ州と接していますが、東、北、西岸は海に面しています。東岸は対岸にマレーシアを臨むマラッカ海峡、西岸はインド洋、北岸はベンガル湾に面しています。北端の平野部に州都バンダ・アチェ市があります。バンダ・アチェ市の沖合にはウェー島、西岸の沖合にはシムル島といった島もあります。スマトラ島の中央部には南北に連なるバリサーン山脈があり、アチェ州の中央部にはラウト・タワル湖（真水の海の意）という大きな湖があります。その湖畔に位置するのがガヨマウンテンコーヒーの聖地、タケンゴン市です。タケンゴン市の東側から南にかけて、ルーセル・エコシステムとよばれる貴重な生態系が広がっており、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが共存する地球上最後の場所になっているそうです。

アチェ州には、アチェ人やガヨ人といった民族が暮らしています。9割以上を占める多数派はアチェ人ですが、ガヨマウンテンコーヒーの産地であるガヨ高原はガヨ人が多いです。

アチェ州は、インドネシアの中でもイスラーム信仰と自立の精神が強い地域として知られています。古くはオランダとは長いアチェ戦争を戦い、2004年12月26日のスマトラ島沖地震による大津波が発生するまでインドネシア政府に対しても激しい独立運動を行っていました。当時は、インドネシア人でもアチェに行くことはとても困難でした。2005年8月15日にインドネシア政府との間で和平協定が結ばれ、独立放棄と武装解除が行われました。その後も外国人が州内を移動するに際し町ごとに警察登録をする必要があったりしましたが、現在は他の州とあまり変わらない環境です。ただし、アチェ州では今でもインドネシアで唯一イスラーム法（シャリーア）に基づく自治権が認められており、イスラーム法を厳格に守ることが求められています。これだけを聞くとちょっと怖そうな感じがしますが、実際に会ってみるとアチェの人達は真面目でとてもやさしく楽しい人が多いです。自分たちの伝統や文化をとても大切にしているだけなので、お互いの文化を尊重できればすぐに仲良くなれる素敵な人たちです。

Wet-hulled精製は、マンデリンコーヒーでも良く使われているインドネシアのスマトラ島特有のコーヒー豆精製方法です。Fully Washed（水洗）精製法とよく似ており水洗式の一種ですが、予備乾燥と本乾燥の二回に分けて乾燥を行いその間に脱穀をする点が異なります。Fully Washed（水洗）精製の乾燥工程は一回です。スマトラ島は雨がたくさん降り長期間連続した晴天日を確保することが難しいので、二回に分けて細切れで乾燥させるWet-hulled精製はスマトラ島の自然環境にとても適した精製方法です。このスマトラ島独特の精製方法の副産物として、土や森を感じさせるエキゾチックな風味が生まれます。この風味はアーシー（earthy）な香りと呼ばれており、スマトラの大地の力を感じることができます。

コーヒーの産地によっては単一的な方法で精製されていることがありますが、ガヨマウンテンコーヒーは様々な方法で精製されています。同じコーヒー豆であっても、精製方法によって味わいが大きく違ってきます。アチェにはコーヒー豆を輸出するだけでなく自分たちでコーヒーを飲んで楽しむ素敵なコーヒー文化があるため、地元の人たちが自分の好みの味を追求するためいろんな精製方法が使われているのです。

主な精製方法を苦み／コクが強い順番に並べると、Wet-hulled（スマトラ式水洗）→Fully Washed（水洗）→Red Honey（半天日乾燥）→Natural（天日乾燥）になるでしょうか。フルーティなフレーバーが強い順番に並べると、反対のNatural→Red Honey→Fully Washed→Wet-hulledになります。CM Naturalは、ちょっと特殊な精製方法です。それぞれの精製方法の詳細は、下記リンクをご覧ください。CM Natural精製のご紹介サイトは、現在準備中です。

ガヨマウンテンコーヒーの味わいは、焙煎度によっても変わってきます。サステイナブル・ガヨコーヒーでは、ガヨマウンテン特有のフルーティなフレーバーをあじわっていただける焙煎度中浅煎りの豆をご提供しています。スペシャルティコーヒーを飲みなれている方にはとても美味しく飲んでいただける焙煎度だと思いますが、スペシャルティコーヒーの特徴である爽やかな酸味を敬遠される方もいらっしゃいます。そのような方には、Fully WashedとWet-hulledの焙煎度中煎りもご用意しています。中浅煎りと比べると、苦みとコクが強くフルーティなフレーバーが弱くなっています。

初めてガヨマウンテンに挑戦したいあなたには、酸味と苦みのバランスがとれたArizka Red Honeyをお勧めします。バランスがとても良いので、どのような場面で飲んでも美味しいと思える店主イチオシのガヨマウンテンコーヒーです。スッキリした味わいのFully Washedも初めてガヨマウンテンに挑戦される方にピッタリです。イタリアン料理の食後にとても良く合います。

マンデリンのように苦みとコクのあるコーヒーがお好きな方あなたには、当店の人気商品である苦みとコクのOlif Wet-hulled（中浅煎り）をお勧めします。苦みとコクを満喫しながら、マンデリンにはないさわやかなフレーバーをお楽しみいただけます。中浅煎りでは酸味が強すぎるとお感じであれば、Olif Wet-hulled（中煎り）はいかがでしょうか？よりしっかりした苦みの中に、ガヨマウンテン特有のフレーバー（酸味）をわずかに感じることができます。

ガヨマウンテンコーヒー特有のフルーティな味わいをガツンと楽しみたいスペシャルティコーヒー通のあなたには、CM NaturalまたはNaturalをお勧めします。苦いコーヒーは苦手だなというあなたにもお勧めです。CM Naturalは、特殊な精製方法によりフルーティなフレーバーを残しつつより味わいをまろやかにした商品です。コーヒー豆の自然の甘味も感じます。Naturalでは、フルーティなフレーバーが爆発している尖った味わいをお楽しみいただけます。